ヘヴィ&ラウドなサウンドを叩き出す100Wのヘッドと堅牢なキャビネット、、、というイメージの強いENGLですが、15W~40Wの様な小型アンプやラックサイズのプリアンプなどもリリースしています。今回はその中でも1Uラックサイズの真空管プリアンプE530を特集したいと思います。
「プリアンプとして」、「オーバードライブ/ディストーションとして」、「小型ヘッドとして」、「レコーディング・ツールとして」などなど、E530で出来る事や他の機器との接続方法を複数回に分けて解説して行きます。
いままで「ラック機器って使うのが難しそう」とか、ENGLのサウンドが欲しいけど「ヘッドを持ち歩くのはチョット、、、」、そもそも「プリアンプって何?」といって敬遠していた方も是非ご一読を!
“プリアンプ”って言われても使い方も解らないし「ラック機器って何となく難しそう、、、」いやいや、そんな事はありません!単純にラック・ケースに収められる様に作られているだけでラック式だからといって使い方が難しい訳ではありません。
プリアンプにしてもMIDI機能などが付いている多機能タイプはチョット慣れが必要かも知れませんが「E530」の様にシンプルなプリアンプはエフェクターを使う感覚で使えます。
実はギタリストの方は意識していなくても“ほぼ”例外なくプリアンプを利用しています。というのも、アンプヘッドと言われるいわゆるギターアンプは“プリアンプ”と“パワーアンプ”を組み合わせた物だからです。さらにスピーカーが組み合わせられた物が“コンボアンプ”となります。
つまり、ギターアンプを使用しているのであれば意識していなくても“プリアンプ”を利用していると言う事です。と言うことは、、、「ギターアンプを使った事がある」=「プリアンプを使った事がある」と言っても過言では無いと言うこと。
苦手意識を持っていた方もギターアンプを使った事があれば大丈夫です!!
ではギターアンプの中にあるプリアンプがどの様な働きをしているのでしょうか?
プリアンプは「Pre-AMP」、Pre=「~の前部にある」と言う事から“アンプ”の前にある物を意味しますが、ここで言う“アンプ”は「パワーアンプ」の事です。
アンプ=AMP=Amplifire=増幅器ってな事で、音をとにかくデカく(増幅)するパワーアンプがメイン・アンプと呼ばれたりします。メイン・アンプの前段にあるのでプリアンプと言う訳です。
アンプの主な目的は音を大きくする事なので主役(メイン・アンプ)はパワーアンプです。じゃあギターを直接パワーアンプに繋げばよりギター本来の音色が出るはず、、、なんですが、パワーアンプはそもそもギターを直接接続するように設計されていません。
その為、ギターを直接パワーアンプに接続するとマッチングが取れずに本来の性能を発揮出来ない事になります。
そこで登場するのが“プリアンプ”!ギターの信号をパワーアンプに適合するように増幅したりインピーダンスを下げたり、簡単に言えば「パワーアンプに送る為の信号の下準備」を行うのがプリアンプの役割です。
それらの役割にプラスして、一般的なギターアンプやE530も含むギター用のプリアンプには「音を歪ませる」、「EQ(イコライザー)で音色を補正する」と言った機能を持っているものが多く有ります。
「Gain」や「Treble」、「Middle」、「Bass」と言ったトーン回路など、ギターアンプについているツマミ類のほとんどはプリアンプの機能で、音作りと下準備をプリアンプで行った後に音をデカく増幅しているのがパワーアンプとなります。
音を大きくする主役がパワーアンプであれば、ギターアンプの“音作りの主役”はプリアンプと言うことです!!
と言うわけで、プリアンプと言うのは難しく考えずにギターアンプのツマミの部分で「アンプの音作りをする部分」くらいに考えておけば大丈夫です。もちろんアンプの音色の要素にはプリアンプ以外の要素もありますが、積極的に音色を変化させる部分はプリアンプになります。
次回は「単体プリアンプを使うメリット」を紹介します。
さて、前回ギターアンプは“プリアンプ”と“パワーアンプ”を組み合わせた物だと説明しました。その為、スタジオ練習やライブ会場にお気に入りのギターアンプを持って行っているのであれば、お気に入りのプリアンプを持って行っているのと同じ事になります。
しかし、スタジオ練習やライブ会場に「アンプを持ち込むのはハードルが高い」と言う方がほとんどではないでしょうか?なにしろライブで使うようなアンプはデカイし重い!!特に真空管アンプの場合、金属の塊の様なトランスが2個あるので更に重量アップ↑、素早さダウン↓という、、、。
そこで、ギターアンプの内パワーアンプ部分は諦めてもせめて「アンプの音作りのメイン」であるプリアンプだけでも、、、そんなリクエストに単体プリアンプは応えます。
単体プリアンプを持ち込めば、自分で持ち込める音がアンプの手前のエフェクターだけではなくアンプの一部であるプリアンプまで拡大!つまりパワーアンプと、スピーカー以外の音作りを行う部分は持ち込めると言う事です!!
もちろんパワーアンプやスピーカーでも音は変わるのですが、プレイヤーが積極的にコントロールできるプリアンプまでカバー出来るのは大きな違いです。
またプリアンプを導入する事でエフェクターの選択も変わります。特に歪系に
多いのですが、スタジオによって置いてあるアンプが違う為に歪みや音色の調整を極端に変えなければならない経験をした事はないでしょうか?
真空管アンプをレンタルした場合は、アンプの手前でそれほど歪ませなくてもエフェクターでブーストすれば歪み具合も音色も丁度良かったのに、トランジスタアンプで同じエフェクターのセッティングにしたら、歪みが弱くなったり、音量が変に上がってしまったり、、、。
これは真空管アンプの方がトランジスタアンプよりも優れているとか、トランジスタアンプが優れていると言う事ではなく、アンプのキャラクターと、エフェクターのキャラクターのマッチングによって引き起こされます。簡単に言うとアンプとエフェクターの相性です。
あるアンプとは相性が良いのに、他のアンプとは相性が悪い=音が好みで無くなるエフェクターという事はよくあります。レンタルの場合はその場にあるアンプを使用する事になるので、いつものエフェクターと相性が良いかどうかは運次第、、、。
そうなると「どのアンプ」と相性の良いエフェクターを買えば良いのか?という「レンタル機材に合わせた」機材選びやセッティングをする事になります。
これに対して単体プリアンプを導入した場合は、他のアンプとの相性が悪くても「導入したプリアンプ」と相性の良いエフェクターを選べばよいと言う事になります。
つまり、オン/オフを行うエフェクターを選ぶ上で、ギターと「必ず信号が通る」=「オン/オフしない」プリアンプという音作りの基準が出来ます。
もちろん先に書いたように、パワーアンプやスピーカーも音色を左右する要素です。その為、プリアンプを導入しただけで全ての音作りが完結できるわけではありまん。しかし、そこの部分=「異なったパワーアンプに接続できる」事も単体プリアンプのメリットになります。
通常のギターアンプはプリアンプとパワーアンプが組み合わさった状態です。100Wのアンプであれば100W、20Wのアンプであれば20Wのパワーアンプが組み込まれています。またその出力に合わせた真空管やトランジスタが使われています。
これらに対し単体プリアンプはパワーアンプが無い状態なので、好みの音や出力のパワーアンプに接続する事ができます。要するに好みのパワーアンプとプリアンプを組み合わせて「好みのギターアンプ」を作る事が出来ると言う事です。
今回の内容をまとめると、単体プリアンプを使うメリットとはエフェクターとの相性やパワーアンプとの組み合わせをマネジメントする為の基準を作る事が出来ると言う事です。
次回は「単体プリアンプの接続について」を解説します。
今回は実際にプリアンプを使う時はどこに接続すれば良いのかを解説します。
前回まではギターの信号に「パワーアンプに送る為の信号の下準備」を行うのがプリアンプの役割だと説明してきました。「下準備」というのは、簡単にいうとギターの信号を「ラインレベル」(ライン信号)に変換する事です。
このラインレベルと言うのが曲者で、様々な規格があります、、、。ただ、大抵はそれぞれの機器にゲイントリムやボリュームなど“ある程度”のレベル調節を行う機能がついており、規格の異なるラインレベルでもそれらを調節する事で対応できる様になっています。
と言うわけで、実はプリアンプを通した信号はパワーアンプだけではなく「ミキサー」や「オーディオ・インターフェイス」といった“ライン入力”=ライン信号用の入力端子がある機器であれば接続出来る事になります。
つまり、「単体プリアンプ」はスタジオ練習やライブ演奏だけではなく、オーディオ・インターフェイスを使用した自宅でのライン・レコーディングや練習にも活用出来ると言う事です!!
では実際にスタジオ練習やライブ演奏で、「単体プリアンプ」を使用する場合はどの様に接続すれば良いのでしょうか?
スタジオで“ギターアンプ”をレンタルする事はよくあると思いますが、パワーアンプのレンタルをした事がある方はほとんど居ないかと思います。と言うのも、スタジオで用意されているパワーアンプは大抵PA用の物だけで、ミキサーに接続されたボーカルなどの再生に使用するものだからです。
もちろんプリアンプをミキサーに接続して、ボーカルと同じ様にPA用のパワーアンプとPAスピーカーで鳴らす事も可能ですが、せっかくなのでギターアンプを利用しちゃいましょう!
古い設計のギターアンプや、それらを模したビンテージレプリカの様なギターアンプ、もしくは小型のアンプには付いていない事もありますが、現在では“ほとんど”のギターアンプには「エフェクト・ループ」が付いています。
「エフェクト・ループ」はプリアンプ部とパワーアンプ部の間にある機能になります。この機能を利用する事で「ギターアンプのプリアンプ」を使わずに持ち込んだ「単体プリアンプ」を「ギターアンプのパワーアンプ」に接続する事が出来ます。
逆に言えば、「エフェクト・ループ」の無いギターアンプには単体プリアンプを接続する端子が無いと言うことです。
「エフェクト・ループ」を使った事がない方もいるかと思いますので、簡単に説明すると「エフェクト・ループ」にはギターアンプの“プリアンプの出口”である「センド」と“パワーアンプの入口”である「リターン」があります。
「エフェクト・ループ」は「センド・リターン」と呼ばれたり、メーカーによっては「FX ループ」という表現や、そのまま「プリアンプ・アウト」、「パワーアンプ・イン」と書いてあるものがありますが、実質的には同じ物です。
ここに何も繋がない場合は、通常はアンプ内部で「センド」と「リターン」が接続され、プリアンプの信号はパワーアンプに送られます。「リターン」に「単体プリアンプ」を接続すると、ギターアンプの内部プリアンプの代わりに単体プリアンプの信号を「パワーアンプ」に送ることが出来ます。
注意しなければならないのは「パラレル・ループ」と言うタイプの物で、この様な機能が付いているギターアンプの場合は、「シリーズ(シリアル)・ループ」に設定する必要があります。
また、「単体プリアンプ」をギターアンプの「リターン」に接続する場合は、最初にギターアンプのツマミは全て“ゼロ”に絞っておいて下さい。マスターボリュームなど、パワーアンプの機能であるツマミは、全ての接続が完了し準備が終わった後に調節します。
次回からはこれまでの内容を踏まえて、いよいよ「ENGL E530」の解説をしたいと思います。
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