当然といえば当然ですが、一番重要なポイントでもあります。アコーディオンの音色を形作るのは、音の発信源となる「リード」、音を響かせる「ボディ」、緻密な設計による内部のパーツ同士の「素材と精密な組み上げ」が主な要因となります。イタリア製と安価なモデルでは、その「全ての素材」と「精密さ」のレベルが大きく異なります。リードが良く鳴り、良い素材、精密な組み上げをもってボディをよく響かせているか。全ての要素が絡み合っていわゆる「良い音」が生まれます。
上記にもある楽器の素材、精密性はそのまま「調律」にも影響してきます。
アコーディオンは中のリードボックスの接地具合、気候や湿度、他様々な要因でピッチが変動し易い極めてデリケートな楽器でもあります。
調律をしても翌朝にはまた多少ずれているという事もよくあります。その為、アコーディオンの調律師は調律作業を1日で終わらせず、翌日に再調整し微細なずれを整えていく作業を行ったりします。
ここで問題になるのが、安価なモデルの楽器。
上記の通り、素材や精密性が元々イタリア製に比べて劣る為、いくら合わせても多少のずれは生じてしまいます。
練習などの演奏には差し支えない程度にはなりますが、レコーディング等厳密な調整が求められるところでの使用には耐えにくいものとなります。安価なモデルの楽器は調整が効きづらい事もそうですが、長期使用でも問題が発生しやすくなっています。
右手の鍵盤や左手のベースボタンの先は金属のシャフトが続いています。シャフト部をイタリア製と比べると一目瞭然。
安価なモデルのものはシャフト部の金属が細く、イタリア製に比べ太さが全く違う上に、イタリア製に使用されている金属は固く、安価なモデルは柔らかくなっています。
安価なモデルの方は力を加えると簡単に曲がります。
鍵盤やボタンの押しが強い方ですと弾いている内にがたつきが発生し、音漏れが生じる場合もあります。演奏が上達して演奏時に圧をかけるような奏法を行った場合にも、歪みが生じてきたりします。
安価なモデルは長期間使用していると鍵盤と鍵盤の受け側が磨耗し、鍵盤がはまったまま戻らなくなることが起こり得ます。こうなってし
まうと何度直しても再発してしまう為、楽器の寿命と言われています。もちろん使用期間や頻度にもよる為、2~3年で発生するような物では本来ありませんが、長期使用していくとこうしたリスクも生じます。
対してイタリア製は横から鉄芯を通して鍵盤を組み込んでおり、その支点を中心に鍵盤が動く仕組みとなっています。その為、鍵盤個々のバラつきも生じにくく、長期間使用していても安定した鍵盤タッチが得られます。
(※注)メーカーや製造された時期によってはイタリア製でもバネ式が採用されている場合があります。この場合、イタリア製でも鉄心タイプのような耐久性、メンテナンス性は得られなくなります。
安価なモデルの楽器はそのコストの安さからアコーディオンの入門機として大変嬉しい価格を実現しています。「まず始めてみる」という事がどの楽器でも必要な為、そのポジションにおいては非常に大きな役割を果たしていますが、アコーディオンを弾き続けるのであればそこで満足してしまってはやはり勿体ないでしょう。鍵盤堂