TORAIZ SP-16 徹底解剖!!
突然ですが、PowerDJ’sは「DJ機材」だけを売っているわけではありません!
なんて宣言みたいに始まりましたが、DJの中には曲と曲をつなぐだけではなく、自分で「楽曲の制作」も行っている人も多くいらっしゃいます。
ですので、当店では楽曲制作のための機材も数多く取り揃えています!
というわけで今回特集するのは、DJに興味を持った人であれば一度は耳にしたことがある「Pioneer DJ」が初めて生み出した楽曲制作ツール、その名も「TORAIZ SP-16」です!
この特集ページでは、「TORAIZ SP-16」のご紹介と何が出来るのか?なぜ今がお買い得なのかをご説明させて頂きます!
Vol.2
Pioneer DJ社に突撃訪問!
TORAIZ SP-16開発者 モンペティトーマス竜馬氏 インタビュー
取材・文:飯田花名子(POWER DJ’s 渋谷)
TORAIZ SP-16徹底解剖!POWER DJ’s渋谷の飯田が、Pioneer DJ株式会社を訪問し、「TORAIZ SP-16」の開発を担当されたPioneer DJ TORAIZ企画グループのモンペティ トーマス 竜馬氏に直撃インタビューを行いました!開発秘話やSP-16に込められた想いをお届けします!
― 本日は、「TORAIZ SP-16」の開発者インタビューという事で心待ちにしておりました。よろしくお願いします。
モンペティトーマス竜馬氏(以下:モンペティ)・・・よろしくお願いします。
― そもそも、今までPioneer DJ社では楽曲制作機材を作ってこられなかったと思いますが、TORAIZブランド(Pioneer DJ初の楽曲制作ブランド)を立ち上げたきっかけはなんですか?
モンペティ・・・そうですね、TORAIZプロジェクト以前にもともとPioneer DJは、DJ機器全般の開発に関してDJ機器を楽器として演奏・PLAY出来る事を意識して物作りを行ってきました。再生ボタンや全ての操作に関して演奏を意識してDJ機器も製作してきました。エフェクトやサンプラーに関しても演奏というフィルターを通して扱える様に意識していたので自然な流れで楽曲制作機材の制作に取り組みました。
― DJ機材も含めて「全て楽器」だというお考えなのですね。
モンペティ・・・そうですね、そして我々も近年<制作をするDJ>と<DJをする制作者>、この二つの世界が交わりつつある事を認識していて、クラブや現場へ行ってもそういったセットアップを見かける事が増えていますし、業界の流れとしてもごくごく自然な流れと背景だと思っています。
― その中でPioneer DJ製品としてではなく、あえてTORAIZブランドを立ち上げた意図はどういったところだったんでしょう?
モンペティ・・・そこはですね、やはりPioneer DJという社名に「DJ」という言葉が入っているので、DJをやっている方には親近感を持ってもらえると思うのですが、制作の方からは我々はまだ認知がなく、DJ向けの製品という印象を与える可能性があったので「TORAIZ」というブランドを作りました。
― 今までDJ機材をたくさん発表してこられたと思いますが、今回「サンプラー」というカテゴリーの製品を出す上で苦労された事はありますか?
モンペティ・・・そうですね、ここ(インタビュー)に来る前に社内の関係者にも色々と聞いてきましたが、企画担当の私として意識していたのは、新しい分野に入っていく上でたくさんやりたい事はありましたが、その中からお客様にとって本当に価値のある事を取捨選択して、お客様が本当に使いたい!と思える機能を取り入れるバランスというかコンセプトワークに苦労しましたね。あとは技術的なところですが、初めての事がたくさんありまして、SP-16のリアパネルは多数の出力端子があります。8TRACKパラレルアウト(8系統の異なるアウトプット)が出来るのですが、Pioneer DJではそれだけの出力数がある製品は今まで作ってこなかったのです。今まで楽器や制作機器の世界では当たり前の様に多出力があった中で DJ機器では多くてもステレオで3系統のOUTPUTまでだった事もあり、苦労があり時間をかけて勉強した一つの事にはなります。
― 参考にされた機材などはありましたか?
モンペティ・・・それはもうたくさん見ました。サンプラーだけではなく操作の面でもパッドを使っているMIDIコントローラーであったり、モジュラーラック等も参考にしたり、サンプラーももちろん参考にしながら色々なインスピレーションを得てきました。
― ゼロから作るとなるとかなり大変な作業があるのですね。
モンペティ・・・そうですね。
― やはり、他のサンプラーと比べても、Pioneer DJ社の機材は初めて触る人にも分かりやすいですよね。CDJもそうですけどSP-16自体もすごく直感的で、今まで楽曲を作った事がない人でも、どうやったら音が出るかなども分かりやすいと思いますし、そのサウンド面もすごくクオリティは高いですよね。作られる上でこだわられたポイント等はありますか?
モンペティ・・・はい、まずサウンドに関してはSP-16のアナログフィルター部分があるのですが、Dave smith Instruments社(楽器デザイナーDave Smithが2002年に設立したアメリカのシンセサイザーメーカー)と協業を行っています。Daveさんとはメールや電話会議、直接サンフランシスコに行って何度もやりとりを行いまして、試作品を聴いてもらったりスタジオで色々な条件をテストしたりしました。SP-16に関してはDave smith Instruments社のProphet-6(Dave smith Instruments社のシンセサイザー)で採用されているアナログフィルター回路が乗っているのですが、どうしてもサンプラーに入れる為にチューニングが必要だったので楽器感を失わないことを前提に一緒に作り上げました。
―そもそもなんですが、どのような経緯でDave smith Instruments社とコラボレーションする形になったのですか?
モンペティ・・・実は開発するずっと前からそういったお話があったのですが、長年温めてきた事が実現した形になります。Daveさん本人も楽器がDJによって使われている、DJブースに色々な楽器を持ち込んで使われている事に気が付かれていて、そういった環境で使われる楽器を作りたいというお気持ちがあったようです。そういった経緯から弊社と協業という事にも繋がったと思います。
―操作の面では、タッチパネルというのも凄く分かりやすいですよね。
モンペティ・・・ディスプレイに関しても直感的な操作性や、情報が一度にたくさん表示されることをかなり意識して作りました。
― 個人的に気になっていることなのですが、スライスを作ったりして波形の編集が出来ますよね?この操作をする時に、等分ではないスライスの行い方はあるのですか?
モンペティ・・・もちろん出来ます。スライスを選択してズームにしてみると例えば波形がはみ出ていた箇所があります。ここでSTARTポイントをいじってあげると細かい部分まで調整が出来ます。
― そのあたりが他のサンプラーだと工数が多い中、SP-16では簡単に出来るのが良いですね。
モンペティ・・・ありがとうございます。制作した段階で何度も他機種との工数の違いを比較しながら、少ない工数で出来るようにとたくさんチェックしてきました。
他社製品として具体的にAKAI MPCシリーズやNative Instruments MASCHINEシリーズなどと近い分野にあると思うのですが、そういった機種との違いや強み、独自性はどういったところになりますか?
モンペティ・・・先ほどお伝えしたサウンドやワークフローの分かりやすさは当然ですが、弊社の強みであるDJシステムとの連携も強みです。弊社のDJ製品の機能で<PRO DJ LINK(Pioneer DJ社のCDJやDJミキサー同士でテンポ情報などを同期できる機能)>という機能があり、SP-16も対応しているのでCDJやミキサーと繋いでかなり高い精度でLINK出来るのが強みとなります。それと16個のトラックがリアルタイムでタイムストレッチする所は業界初の機能になります。
― 実際に、DJ機材と組み合わせて使用する際にどういった可能性を見せる事が出来ますか?
モンペティ・・・そうですね、例えば作曲もしている人がDJをする時に自分の曲を使ってDJを行ったり、リアルタイムに曲を動かしながらPLAYする時にBPMをずらさずにLINKする事でDJする事も可能ですね。あとはSP-16にはDIN端子(MIDI)もついています。MIDIクロックでLINKする事も可能ですので、TORAIZ AS-1(TORAIZシリーズのアナログシンセサイザー)などアナログモジュール等も全て同期を試みる事は可能です。
― 実際に現場でそういった事をされている方はいらっしゃいますか?
モンペティ・・・個人的にはSATOSHI TOMIIEさんが凄かったですね!TOMIIEさんのパフォーマンスはミキサーとCDJ、SP-16を繋いでPLAYされていて更にその横にユーロラックのモジュラーを置いてDJをされていました。もう見た時にどこから音が出ているのか分からないぐらいの状態で(笑)。モジュラーで作っているLFOやシーケンスパターン等が全てシンクしていて、さすがにここまで出来るとはと、開発側としてとても感動しました!
― すごいですね!SP-16はユーザー次第で様々な使い方が出来ると思うので、現場での具体的な例は、私たち販売スタッフからもお客様へ伝えていきたいです。世界的に見るとどのあたりの地域でそのようなプレイをされる方が多いですか?
モンペティ・・・今は地域で言うと欧州ではそういったスタイルは人気が高いですね。結構テクニカルなプレイをする方が多いようで浸透しているようです
― 日本でもそういった現状が作れるようにしていきたいです。昨年秋、Pioneer DJ社からSP-16とは別にハードウェアサンプラーの「DJS-1000」が発売されましたが、SP-16とDJS-1000の違いを教えていただけますか。
モンペティ・・・「SP-16」は制作向けに作られた機材で、基本的にはスタジオやご自宅の制作システムの中で使われる事を想定されています。対して「DJS-1000」はSP-16で作ったプロジェクトファイル等をクラブやDJの中で使われる事を想定しています。DJS-1000にはテンポスライダーもついているのでリアルタイムにBPMを変えたりも出来るようになっております。
― なるほど!SP-16ではファームアップが結構出ていますよね。サンプリングも64秒まで伸びました。様々な機能がどんどん増えているので、そういった機材も珍しいなと思っています。
モンペティ・・・我々としてもお客様の声をフォーラムやSNSで拾ってユーザーが必要としている機能を、いつもアンテナを張って探しています。多くの人に使って欲しいという気持ちが強いです。
― 多くの方に使って頂きたいとは思いますが、特にどういった人に使ってもらいたいですか?
モンペティ・・・そうですね、これからハードウェアを使って楽曲制作を始める方であったり、PCに比べてハードウェアが使いにくいと思っている方だったりに使って頂けると、SP-16は分かりやすいワークフローで凄く魅力的だと思っています。タッチディスプレイ等も直感的で扱いやすいですし。
― 最後になりますが、ユーザーの方々に何かメッセージはありますか?
モンペティ・・・今使って頂いている方には本当に使って頂いてありがとうございますという事と、もっとこうなったら良いのにという事があれば我々のフォーラムやSNS等でフィードバックを頂ければ有難く思います。また、これから使ってみようかな?とお考えいただいている方には是非、お近くの楽器店などで先ずは触って頂き是非SP-16を体感して頂き、良ければ購入をして頂ければと思います。これからもTORAIZらしい企画製品を計画しています。是非期待して欲しいです。
― 今日はお時間を頂きありがとうございました!PowerDJ’sでもぜひSP-16の良さを伝えていきたいと思います!
モンペティ・・・こちらこそ、ありがとうございました!
インタビューはここで終了したのですがこの後、SP-16の裏技的な使い方を教えてもらいました!
モンペティ・・・ところで、こんな使い方あるのですが、ご存知ですか?
― どんな使い方ですか?
モンペティ・・・裏技っぽくなるのですが、サンプルを何か用意して・・・例えば、ピアノの音がありますよね?この音で、LOOP機能を使ってシンセサイザーのように音を作りこむ事が出来るのです。LOOPの長さを極端に短くして音が連打されている様なショートLOOPを作ります。そしてAMPエンベロープなどを使って音を編集し、SCALEモードで演奏するとピアノの音をベースの音みたいに鳴らせるのです。
― なるほど!面白いですね!
モンペティ・・・本来の使い方とは少し違うかもしれませんが、こういった音にさらにエフェクト等をかけると雰囲気も変わりますし、音で遊んでユーザーに SP-16を探検して欲しいなとも思っています。
― このような使い方のヒントをいただけると本当に面白いし、楽しいですね。本日お話しいただいたことをお客様へ伝えさせていただいて、私たちがユーザーとメーカーの架け橋になれたらと思います!