【リフィニッシュのお話】

楽器のリフィニッシュ(塗装の塗り直し)は、持ち主の好みのカラーにチェンジできるのはもちろんのこと、修理履歴やキズ跡なども隠すことができるんですよね。そのため、オリジナル塗装から別のカラーに塗り直された楽器はとても多く存在します。

リフィニッシュされたヴィンテージ楽器の年代確定はとても難しく、より詳しく判断できるのはその楽器のリフィニッシュの経緯を知る人、つまり塗装した張本人とその所有者くらいなんですよね。そういった性質上、リフィニッシュものの楽器に関しては、ハートマンヴィンテージでも100%その年式のものですよ、と断定はしておりません。

今回は、リフィニッシュならではの年代確定の難しさを持ちつつも素晴らしいコンディションとサウンドを持つ1本をご紹介しましょう。ホワイトカラーは人気仕様ですからね、ご興味があればぜひご覧ください。

今回の大きなポイントは、シリアルナンバーが消えてしまっていること。オールドギターファンの方であれば、1960~70年代ギブソンギターがシリアルナンバーだけで年式を確定することができないことはご存じかと思われますが、それでもとても重要な情報であることに違いはありません。

私はこの楽器を、1969年~70年頃に生産されたレスポールカスタムと判断させていただいたのですが、判断材料を記しておきます。

1、ネック部
マテリアルはキズの部分から見える木地と、塗装と木部の経年変化よりマホガニー3ピースであることが確認できます。iドットなしのブランドロゴは「o」の上部分が切れている1969年頃にみられるバージョンであることに注目しました。小さなボリュートが確認できるので、1969年から70年頃にかけての生産であることも推測できます。シリアルナンバーが消えているのと同時に、もし「MADE IN U.S.A.」の刻印が以前にあった場合には、1970年頃の生産と判断することができるでしょう。501VXチューナーが残っているのもひとつの参考にはなりますが、リフィニッシュものでは穴埋め跡や追加の判断は難しいですね。

2、ボディ部
フロントピックアップキャビティにロングテノンは確認できず、ジョイント部分は1975年頃までの製法。コントロールキャビティの形状、および内側にてパンケーキ構造が確認できるため、1969年中期以降~75年頃までのボディと推測します。各キャビティは完全に塗りつぶされてはおらず、オリジナルのエボニーブラックカラーが確認できます。と同時に、ネックリセットの痕跡はないように見てとれます。

3、電装系
ピックアップやキャパシターは交換済みですが、69年34週のPOTデイトが3つ確認できるのは非常に心強いです。弦アース~フロントボリュームPOTのハンダが当時のままなのも見逃せません。これがあるのとないのとでは、信ぴょう性がだいぶ変わってきます(それでも100%とは言い切れませんが)。

上記の情報を総合し、1969年8月以降~1970年頃に生産された個体と判断しました。
繰り返しにはなりますが、リフィニッシュものの性質上100%の年式確定はできませんので、ご自身の判断材料としてご参考いただければ幸いです。

2024/10/06 ハートマンヴィンテージギターズ 小松崎 のスタッフレビュー

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